拡大写本って? 弱視とは?

拡大写本って、どんな本?

視覚に障害のある人のために、文字を読みやすい大きさに書き直した本を、「拡大写本(かくだいしゃほん)」または「拡大図書」といいます。

 《拡大=単に文字を大きくする》だけなら、本のページを拡大コピーすれば文字は大きくなりますが、それでは文字の大きさに比例して紙は大きくなり、文字は細く見えてしまいます。
 そして、弱視のこども達は視力が弱いというだけでなく、さまざまな視覚障害を併せもっていることが多く、一人一人の見え方は大きく違います。
 私たちが作る拡大写本は、原本のイメージを尊重し、どうすれば読み手の子ども達にとって読みやすい本ができるのかを、日々試行錯誤しながら作っています。

 

Q. 弱視(じゃくし)ってなに? どんな見え方?

 

弱視とは?

世界保健機関(WHO)では、弱視の状態を『眼鏡など矯正しても視力が0.05以上、0.3未満』であると定義しています。しかし実際には視力数値だけではなく、視野や明るさといった視覚的な障害が複合的に絡まっているものがほとんどのようです。

 

百人いれば百通りの見え方がある

日本眼科医会の発表によると、全国で約144万人もの人々がなんらかの視覚障害を抱えて生活している、いわゆる弱視者であると言われています。弱視者とは具体的にどのような人のことをいうのでしょうか。
「弱視の人が100人いれば、100通りの見え方をしている」とよく言われるそうです。

弱視の定義はとても曖昧です。全盲のようにまったく視力が無いわけではなく、しかし近視や遠視などのようにメガネやコンタクトレンズで視力を矯正することが難しく、特有の不自由さが多様にあるためです。

原因や症状は様々であり、一人ひとりが感じている固有の「見えにくさ」はそれぞれ全く違っていて大きく幅があります。

このように弱視とは、全盲ではないけれど視覚機能が著しく低下しており、学習や日常生活に不便さを感じる状態のことをいいます。

 

下の図は視覚的な障害の見え方の例です

ちゅうしんあんてんの例

 

中心暗点(ちゅうしんあんてん)
視野の中心部分が暗く見えにくいが、その周辺部分は見えるという症状。文字を見ようとすればするほど見たいものが視野から消えてしまったりぼやけてしまったりするといわれる。

しゅうめいの例

 

羞明(しゅうめい)
光がまぶしくて見えにくい状態を指す。文字を見る際には白い紙面に反射した光でさえ眩しく見えて文字がかすんでしまう。拡大写本では文字を拡大するだけではなく、白黒を反転したネガの紙面で文字を見やすくする工夫などがある。

しやきょうさくのれい

 

視野狭窄(しやきょうさく)
視野の一部が見えなくなる状態をいい、暗点とも言われる。緑内障や網膜剥離などの視覚障害が原因と考えられており、まるで五円玉からのぞいたような視野になる。広い範囲を見るためには何度も視点を変えなくてはならない。

 

拡大写本の主な読者である弱視の人たちは、本や雑誌だけではなく、私たちの身の回りにあふれている、チラシや広告、電話帳や路線図、薬の効能書きなど、日常生活のさまざまな面で文字を読むことに苦労しています。なかには拡大写本の文字でもルーペや単眼鏡などを使って読む人もいます。文字を追うことだけで眼を酷使することは言うまでもありません。このように弱視の人の見えにくさというのは、非常に多様であるために課題も山積みとなっているのが現状です。

※この記事は、「拡大写本」についてと、その必要性を知ってもらうために、私たちが知る範囲で書きました。文章や内容の誤りなどありましたら、ご意見よろしくお願いいたします。